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はじめてのグミ開発:グミを制する管理指標で失敗ゼロを目指すロードマップ

2017.6.8 2025.4.7 更新
グミ事業を始めたい人必読。腐りにくさ・甘さと粘度・夏でも崩れない硬さ、を管理する『グミ開発3つの指標』で工程を最適化し、試作から量産まで一貫させる方法、原料選定や乾燥機の選び方、賞味期限18か月の秘訣まで網羅。

今日から実践できる完全ガイドとして経験25年のスイーツコンサルタントが分かりやすくまとめてお伝えします。

目次

グミの定義

“グミ”と呼ばれる条件を整理すると
◆弾力がある(「噛んで戻る」食感)
◆水分20 %以下
◆主原料が糖
◆咀嚼菓子として常温流通できる
これらを満たせば、熊の形でもリング型でも、ビタミン入りでも 「グミ」 と呼ばれます。

・グミは“どろどろの濃い砂糖液”を固めたもの
・ガムは“ゴム状ベース”が主役で甘味を付けたもの
・ゼリーは“水分やジュース”が主役で飲める位に柔らかく固めたもの

グミに似た菓子に『パート・ド・フリュイ』があります。これはフランス発祥のフルーツゼリー菓子と言えます。

この記事では 初心者でも2週間で試作品を形にできるロードマップを順に提示していきます。

1. グミの基本工程
調合:糖液を95 ℃で溶解
濃縮:80°Bxまで真空濃縮
成形:80 ℃で充填→15 ℃急冷
乾燥:熱風外側乾燥&除湿深部乾燥
仕上げ・包装:ワックス or コーティング→窒素充填

2. まず覚える指標「Aw ≤0.60」(水分活性が0.60以下)ばい菌が自由に使える水分量が多いと腐敗リスクが高まる

基本的な用語

糖度を示すブリックスという単位があります。グミでは「80°Bx(ブリックス80度)」が頻繁に使われます。ブリックスは『対象物100 g中にショ糖が何 g溶けているか』を表し、食品の目安は、ジャム:65°Bx、はちみつ:75°Bx、それと比較してグミ用糖液:80°Bxですので、かなりの甘さがあり常温でも日持ちする構造になっています。

原料スターターキット

(500 g〜5 kg 試作を想定した最小ロットで用意すべき材料目安とポイント)
1、高マルトースシロップ(中程度に糖化された水あめ=DE38程度) 1 kg パウチ×2 〜
※水あめ専門店や富澤商店などで小分け入手可 吸湿しにくく、ベタつき低減、結晶化が遅く長期保存向き、砂糖と1:1前後で配合すると 80 °Bx が作りやすい

2、ソルビトール液 70 %(低カロリーで保湿力の高い甘味料で日持ちを延ばしつつ、べたつきと硬化を防ぐ万能素材) 500 g ボトル×1 Aw(自由水)を下げる働き。甘さは砂糖の 0.6 倍。入れ過ぎ注意(冷感が出る)

3、 ゼラチン 200 Bloom(ブルーム値とは、ゼラチンの固まりやすさ指標。はかりでゼラチンゼリーを押して「何 g で凹むか」を測定した数字)
- 50–120 Bloom:やわらかいムース向け
- 180–260 Bloom:グミ・マシュマロ向け
顆粒500 g 袋×1

設備①卓上真空釜:焦がさず短時間で80 °Bxへ濃縮・脱泡
設備②シリコンモールド:スターチ不要
設備③ハロゲン水分計:5分で含水率→Aw推定、乾燥終点を判定
設備④デシケーター乾燥箱(低湿温調):45 ℃予備乾燥+「低温×超乾燥」で内部水分も抜き切るとAw≤0.60に

ラボ試作(500 g)
グラニュー糖 125 g/高マルトースコーンシロップ(DE=38) 175 g/ソルビトール液70% 40 g/精製水(軟水器を通したもの) 125 g/ゼラチン 35 g(前述の水でふやかす)/クエン酸0.8 g/香料0.5 g

グミ製造で覚えておきたい数字・指標

『ABT 指標』 = グミの「食感・保存性」を決める3 本柱
A Aw(= water Activity)「菌が使える自由な水の割合」が多いと腐りやすく、0.70を超えるとカビ・酵母が増殖する

B Brix(°Bx) 糖など“固形分”の%
=粘度と甘さをあらわす 80°Bxより低い→ベタつく、高い→硬すぎ・歩留まりが悪い

T Tg(Glass Transition Temperature) グミが “ゴム状→ガラス状” に切り替わる温度 目安は経験則による部分が大きい(保管温度+10 ℃を目安に進める) 「ゴム状」と「ガラス状」の違い:ゴム状→伸びて戻る・ムニッと噛み切れる ガラス状→カリッと割れる・パキッとはじける 乾いたパスタ/飴の欠片状

Tgより上  … 分子が動きやすく“ゴム状”
Tgより下  … 分子が動けず“ガラス状”

グミは 水を減らしたり糖を増やすと Tg が上がり、常温でもガラス状に近づく。
保管温度 ≫ Tg ゴム状 べたつく・へこむ
保管温度 ≈ Tg 半々 柔らかさ安定域
保管温度 ≪ Tg ガラス状 割れる・白く粉を吹く

レシピ設計では 「保管温度よりTgを+10 ℃高く」 が鉄則。→ 夏でもべたつかず、冬でも割れにくい“ちょうどいい弾力”を保てます。Tg はその境界温度で、水分や糖を変えると動く数値。

覚え方 A(Aw=腐敗に関係) B(Brix=甘さ調整) T(Tg=硬さ・ベタつき)

3指標の読み方
Aw が0.7→ Tgが下がり夏場ダレる。0.55なら安心
Brix が低い→ カビが生える
Tg が高い→ 硬くて噛めない

グミの 「日持ち・食感・作りやすさ」 は3指標のバランス。具体レシピに当てはめると…
ソフト食感の果汁グミ 0.63  78° 30 ℃ 4–6 か月
中硬度のサプリ系グミ 0.58  81° 38 ℃ 12 か月
ハードタイプの海外 gummy bears 0.55 82° 42 ℃ 18 か月

*Tg は 25 ℃環境で計測した代表値

なぜグミで 80°Bx(水分を20 %前後まで絞ること) が多いのか→ゼラチンが弾力を発揮しやすい・微生物が増えにくい・常温でもべたつきにくい

グミ開発では この濃度を基準にし『多機能甘味料』(ソルビトール/マルチトール/キシリトール/エリスリトールなど)や酸味料を微調整しつつ最終食感と保存性を整えていきます。

→80°Bx→80 ℃充填→15 ℃15 min→45 ℃3 h+30 ℃12 h(目標 Aw=0.58、硬度=4.5 N)

2週間でグミ開発ができる工程表

小型ラボで 500 g 試作が自力で完成し、数値(Aw・Brix・Tg)を測ってレポートできるようになることが目標。

〈0日目〉スタート準備
□ この記事を読む
□ 計測器リストを確認(屈折計・ハロゲン水分計)
□ 必要な原料をネット注文(ゼラチン200Bloom/高マルトースシロップ/ソルビトール液/クエン酸)

1週目 ─“知る・揃える”
1 ABT3指標の意味を知る
2 YouTube「グミ工場ツアー」視聴
3 屈折計で身近な液体(蜂蜜・シロップ)を測る
4 ゼラチンの戻し実験:Bloom値200 vs 250 硬さ比較
5 ハロゲン水分計の操作練習(水だけ測定)
6 小鍋で砂糖+水を 82°Bx まで煮詰める練習
7 1週間の活動をノートに整理

2週目 ─“作る・測る・直す”
8、9 基礎レシピ500 g仕込み、80 ℃でシリコン型に流す→15 ℃で 15 分冷却 → 45 ℃乾燥箱へ 3 h
10、11 ハロゲン水分計で Aw 代替値&含水率をチェック→表面がベタつくなら追加乾燥 1 h/硬すぎなら水 5 g 加算で再仕込み
12 “手ゆがみテスト”※ で Tg を簡易確認
13 完成品を食べて官能シートへ記入
14 ABT 数値 + 官能結果 を1枚の A4 レポートにまとめる

※手ゆがみテスト:冷蔵庫(4 ℃) → 室温(25 ℃) → 手のひら(35 ℃) に置き、手のひら温度で形が保持できれば Tg≥35 ℃目安。DSC装置(融解温度・結晶化温度を測る)が無い場合の施策

チェックポイント
①Aw ≤ 0.60(水分活性計測 or ハロゲン水分計+換算表)②Brix 78–82°(屈折計)③Tg ≧ 保管温度+10 ℃(簡易テストでOK)④官能評価 3 人以上で「味・香り・硬さ 4 点以上/5 点満点」

次ステップ
味バリエーション:柑橘・ハーブなど酸度変化で ABT の再計測 ▷保存試験:25 ℃保管で 2 週間ごとに Aw と硬度を記録 ▷量産設備の検討:スターチモーグル (粉に型を押すタイプ)or シリコン自動デポジター比較見積り

はじめてのグミ開発・まとめ

今日から一歩、着実にABT(Aw・Brix・Tg)の3指標 を設計図にすることでグミの「べたつき・割れ・カビ」の迷路から抜け出せます。

スターターキット(原料3種+設備4点)さえ揃えばキッチン1㎡で500 g試作は今すぐ可能です。手順表を1日1マスずつ塗りつぶせば、2週間後には “数値で語れる試作品” が出来上がるはずです。

まずは含水率とAwを測るところから。自分の数字を知れば、改善ループが回り出します。

もし行き詰まったら、私の商品化率リアリティ診断を受けてみて下さい。ムダな投資を1/10に抑え、具体的な進め方をご提案します。〇〇はどうしよう…等と「悩む時間」を費やしても「行動」が、どんどん遅れてしまいます。それより必要な行動に絞って戦略通りに効率良く動く方が確実に結果が出ます。

うーん…これを聞くべきか…?迷った時点でLINEから、お気軽にご相談下さい(月江直通で自動情報配信ではございません)

◆月江 瑞穂(つきえ みずほ)と申します。
商品開発をしたり、製菓業界の知見をお話したり、パティシエに技術指導をしたりしています。3年続ける人が、わずか1%しかいない菓子業界に(こそだてしながら)25年在籍している珍獣です。スイーツ技術コンサルタントとして活動中。

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