Blog ツキ・ブログ

体験入学受付中

HOME // ツキ・ブログ // 生地の食感を生み出す技術解説:ふわふわ・弾力・もちもち

Blog 読むとツキがあがるブログ

CATEGORY


商品開発

生地の食感を生み出す技術解説:ふわふわ・弾力・もちもち

2029.1.5 2025.5.23 更新
スイーツ商品開発にてプロ向けに製菓現場で活用できるよう、例えば『どら焼き』生地をふわふわ・弾力・もちもちの3つの食感に仕上げる技術的ポイントを解説します。

各食感に適した配合バランス、仕込み時の手法の違い、焼成条件、さらには食感を維持する保存・包装方法について解説。理想の仕上がりに近づけるためのレシピ構築法です。

目次

ふわふわ食感の作り方・使い方

△生地断面はキメが整っているのが特徴
はじめに『ふわふわ』生地について。ここでは『どら焼き』生地を例に挙げますが、起泡系のスポンジケーキ全般でも通ずるので、ぜひ参考にしてみて下さい。

『ふわふわ』系は、生地が主張しすぎず軽いため、餡の風味を引き立てる狙いがあります。厚みがあっても口当たりがソフトで食べやすい。飽きがきにくい点がメリット。

ふわふわ生地配合: 比重軽め(小さい)に調整します。基本は薄力粉を使用、卵を多めに配合。特に卵白比率を高めることで膨らみが増します。砂糖量が多すぎると比重が重くなりやすく、蜂蜜やみりんを少量加えることで風味と保湿性を高めます。膨張剤はベーキングソーダ(重曹)他ベーキングパウダーを使う場合もあります。

重曹は独特の風味を与え、焼色がよく付きます。一方、ベーキングパウダーはガスが2段階(水に触れた瞬間、熱が加わった瞬間)で作用し生地を安定して膨らませるため両者を使い分けます。

どら焼き以外の生地においても、メレンゲを加えた生地は空気含有量が多く、生地比重がおよそ0.4前後まで軽くなることもあります(通常のどら焼き生地比重は0.8程度)。 また、卵の泡立て方には、全卵を泡立てる方法と、別立て法(卵黄と卵白を分けて扱う方法)があります。

空気を多く含んだふわふわ生地は乾燥に弱いため、焼成後は適切に保存し、しっとり感を保つことが大切です。粗熱が取れた生地は、餡を挟む前でも一旦ラップで包んで水分の蒸発を防ぎます。特にふわふわ生地は生地表面の水分が飛びやすく注意が必要です。

弾力・ほぐれる食感の作り方・使い方

食感の特徴と目的: 弾力のあるどら焼き生地は、指で押すと軽く跳ね返すようなプリッとした歯ごたえを持ちます。ふわふわほど軽くはないものの、歯切れが良いのに適度な噛みごたえがあります。

この弾力食感は、餡に負けない存在感を演出し「生地を味わう」どら焼きに適しています。また時間が経ってもしぼんで形崩れしにくい利点があるため、製造から提供までのタイムラグが生じる現場でも扱いやすいです。

弾力を出すために粉の一部に中力粉や強力粉を加えることがあります。砂糖は生地の保湿と柔軟性に寄与し(しっとりさせつつ弾力を保つ)蜂蜜や水飴は保湿性が高まります。

膨張剤は重曹を使います。重曹生地には独特の『縦の気泡』ができます。ベーキングパウダーもよいですが、弾力重視の場合は泡を大きく膨らませすぎないようコントロールします。

卵・砂糖・液体(蜂蜜や水など)をボウルに入れ、泡立て器でしっかりと混ぜ合わせます。ふわふわ生地のように泡立てる必要はありません。生地の比重は中程度(0.7~0.8程度)に保ちます。粉類(薄力粉、もしくは強力粉少々)はあらかじめ混ぜてから加えます。

弾力生地では生地を休ませる時間が品質に大きく影響します。混ぜた直後の生地は気泡が不安定で、生地内部でグルテンが緊張していますが、30分~1晩寝かせると生地が落ち着き、粉も十分に水を吸います。休ませることで生地に均一感が出て、焼いたときに表面が平滑でキメの揃った焼き上がりになります。寝かせた生地はもったりと粘度が増すため適宜、水を足して調整します。

弾力生地は蜂蜜やみりんを入れた場合は焦げやすいので注意が必要です。ややこんがりめの焼き色が付くまで焼くと香ばしさとコクが出ます。

保存方法と食感維持: 弾力のある生地はふわふわ生地に比べると多少乾燥に耐性がありますが、やはりしっとり感を保つ工夫が必要です。焼き上がった生地は粗熱が取れたらすぐに餡を挟み、1個ずつOPP袋などに個包装します。個包装することで生地から水分が抜けにくくなり、時間が経ってもしっとり弾力のある食感が続きます。蜂蜜類を適度に配合している生地は保湿性が高く、翌日以降もしっとり感が持続します。

もちもち食感の作り方・使い方

食感の特徴と目的: もちもちとしたどら焼き皮は、餅のような粘りと柔らかさを感じる独特の食感が特徴です。指で押すとゆっくり戻るような粘弾性があり、噛むと適度な抵抗感とともにモチモチと歯切れ良い食感を楽しめます。コンビニなどで和洋折衷の生菓子として人気です

もちもち食感の狙いは、飲み物が要らない(口内の水分が奪われない)のが特徴で子どもから若い世代では特に人気のある生地です。

主原料の配合バランス: もちもち生地の配合上の最大の特徴は、小麦粉だけでなく、もち粉(製菓用の微細な餅米粉)やデンプンを組み合わせながら薄力粉に一定割合を混ぜ込みます。

ただし、もち粉やデンプン100%で作ると生地が膨らまずすぐに固くなってしまいます。(薄力粉:もち粉 = 7:3 などで配合します)卵は、もちもち生地では少なめでも成立しますがコクや旨味の点で適量添加するケースが多いです(卵白を極端に増やすと逆にパサつきが出るので注意)

砂糖は多めに配合する傾向があります。砂糖には水分を保持して生地をしっとり保つ効果があり、結果として生地が硬くなりにくくなります。上白糖や転化糖(蜂蜜・水飴など)を組み合わせ、糖度を高めにしてしっとり感を持続させます

膨張剤は少なめにします。もちもち生地ではあまり厚く膨らませるよりも、ある程度ぺったりとした柔らかさを重視します。膨らみすぎると逆にしぼんでシワシワになります。 同様の理由で泡立ては最小限にします。最低でも30分ほどは生地を寝かせて落ち着かせます。こうすることで粉っぽさが消え、焼いたときによりモチっとした食感になります。

弱火で焼くことで生地内部までじっくり熱が入り、もち粉やデンプンが糊化してモチモチの食感が生まれます。焼き色は薄めになりがちですが、これはもち粉が多い分、小麦由来の糖とアミノ酸が少なくメイラード反応が弱いためです。

仕上がり別・生地作りのポイント比較

食感タイプ 配合・材料の特徴 生地の密度 (比重)

◆ふわふわ 薄力粉100% BP、重曹使い分け 軽い(比重小)空気を多く含む 卵白をメレンゲにして別立てする方法もある 焼き色薄めでもOK 冷凍可

◆弾力 重曹 やや軽い(比重中) 全卵を泡立て過ぎない 生地は30分~1晩休ませ均一に 焼き色こんがり目 冷凍可

◆もちもち 薄力粉+もち粉・白玉粉・タピオカ等デンプン多め 砂糖・はちみつ多め BP少なめ  重め(比重大) 密度高い 生地を十分水和させる(長めに休ませる) 弱火でゆっくり焼きすぎ注意 色付きにくい傾向がある

プロの現場では素材の特性を理解し微調整を重ねることが重要です。同じどら焼きでも食感の違いで印象は大きく変わりますので、ぜひ上記のポイントを参考に理想の生地作りに活用してください。

比重  空気含有率  焼き上がり傾向  製品例
0.40〜0.60 ◆40〜60 %が空気 きわめて軽い。雲のよう。シフォンケーキ、厚焼きホットケーキ
0.60〜0.75 ◆25〜40 %が空気 ふわふわ・しっとりのバランス。ほどよい弾力 どら焼き〈軽系〉、ジェノワーズ
0.75〜0.90 ◆10〜25 %が空気 しなやかな弾力と保形性。味の乗りも良い どら焼き〈標準〜弾力系〉、カステラ
0.90〜   ◆〜10 %が空気  もっちり・密なクラム。膨張剤少量 もち粉入りどら焼き

思った通りの食感を出す方法・まとめ

どら焼きの生地の食感は“比重”という数字でコントロールできます。商品が顧客の口に入った瞬間──ふわりとほどける軽さ、歯を押し返す弾力、じわりと続くもちもちの余韻。その差異を出すことが可能となります。「粉×卵×糖×熱」というシンプルなレシピの味を決めるのは作り手の意識です。

朝いちばんのコーヒーと合うのは、空気を抱えた0.55の軽やかさ。
祭りの屋台で手を伸ばすなら、しなやかな弾力で形崩れしない0.70。
夜更けのご褒美スイーツには、噛むほど味が広がる0.80の密な食感。

同じどら焼きでも、シーンが変われば“正解”は変わります。誰に・いつ・どんな場面に届けたいのかを思い浮かべながら開発企画する──そこに作り手の心が宿ります。

今日の記事が皆さまの現場で「このテクスチャなら顧客に喜ばれる」と想像を巡らせるきっかけになれば幸いです。〇〇はどうしよう…等と「悩む時間」を費やしても「行動」が、どんどん遅れてしまいます。それより必要な行動に絞って戦略通りに効率良く動く方が確実に結果が出ます。

うーん…これを聞くべきか…?迷った時点でLINEから、お気軽にご相談下さい(月江直通で自動情報配信ではございません)

◆月江 瑞穂(つきえ みずほ)と申します。
商品開発をしたり、製菓業界の知見をお話したり、パティシエに技術指導をしたりしています。3年続ける人が、わずか1%しかいない菓子業界に(こそだてしながら)25年在籍している珍獣です。スイーツ技術コンサルタントとして活動中。

つきえ経歴(←タップしてご覧下さい)

ブログ一覧から「商品開発含む 全500記事」を閲覧できます。  ↓ ↓ ↓

ブログ一覧