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観光地スイーツ最前線:地方都市で菓子ビジネスを成功させるには

2018.4.6 2025.4.10 更新
地方都市のスイーツ開発攻略法。全国の道の駅、空港、時代の名所など栃木・京都・鎌倉の観光菓子店は国内客中心ながら訪日客も回復傾向。

リピーターを生む味とパッケージ、SNS・限定商品・体験型イベントによる集客、市場規模の伸びと課題をコンパクトに解説。経験25年のスイーツコンサルタントが分かりやすくまとめて、お伝えします。

目次

栃木=「いちご×和洋折衷」

菓子店側がやるべき具体策は、共通テーマの商品開発を地域で行うことです。一方、市場分析は「本格回復」の段階で2023年度の観光土産菓子市場は 2,625 億円。コロナ前比86.3%まで戻り、インバウンド再拡大と国内旅行需要の底上げでさらに伸長が見込まれています。

1. 市場規模と地域特性
2023年観光客数
◆栃木県 8,387万人(前年比115.5%)
外国人宿泊者23.5万人(前年比513.8%) 日光・那須の強力なリピーター基盤+爆発的インバウンド復活 「面」で稼ぐ広域周遊が鍵

→「面で稼ぐ広域周遊」とは?点(単一観光地)ではなく複数ポイントを束ね地域全体で滞在・消費を伸ばす観光戦略を指します。

なぜ“面”が重要なのか
観光客が日帰りしてしまう/単点訪問で滞在時間と消費額が伸びないのが理由→広域ルート提案+2次交通(周遊バス・パス)整備で宿泊誘導・平均消費額アップ

店舗が散在し個店頼みで集客が不安定→商工会がハブとなりスイーツマップを作成/スタンプラリーを企画→全店で送客し合う工夫

季節ごとの繁忙期&閑散期の波が大きい→エリア一体の年間イベントカレンダーを編成しオフシーズンでも来訪理由を創出する工夫

栃木県(日光、鬼怒川、那須)の例

栃木を例にした“面で稼ぐ”施策『エリア横断フリーパス』日光・鬼怒川・那須を繋ぐ周遊バス×電子チケットで移動ハードルを下げ、宿泊率を底上げする施策。

3市町合同『とちぎスイーツ巡礼』各店でパッケージカラーを統一し3店舗達成で限定ノベルティを進呈する企画や、土産菓子を1拠点から全国発送し旅後リピートを地域内で循環する工夫。

→“地域公式ショッピングモール”を構築し、複数の地元事業者の商品を 一括で販売・決済・発送 するしくみ。自治体の「アンテナショップ WEB版」のイメージ。複数店舗・複数カテゴリーを1ドメインで販売
『多言語商品ページ』
『物流パートナー』
『地元菓子店・農家・工芸店』
国内+海外 の2系統カート(円建て/外貨建て)分析データを共有し、売れ筋をリアル店舗へ“逆輸入”

主なメリット
▶販路拡大:小規模店でも訪日客の“旅後リピート”や国外需要を獲得▶スケールメリット:共同物流でクール便・関税対応コストを圧縮▶データ可視化:顧客属性・地域別売上を解析▶ストーリー発信:観光記事と商品ページを紐づけ、回遊導線をECへ

実例
せとうちDMO 「島と暮らす」 7県の食品を統合しポケットマルシェと連携。海外発送も視野に販路強化。
たじみDMO(岐阜) たじみDMO WEBSHOP うながっぱ関連グッズや陶器を販売。観光 PR と物販を同一サイトで運営。
平泉DMO(岩手) LocalいちBA 地元産直品を共同発送。送料無料キャンペーンで販促。
彩の国DMO(埼玉) 物産館「そぴあ」+EC 店舗データとECデータを統合して新商品開発に活用。

導入までのステップ(菓子店視点)
▶出品登録:原材料・アレルゲン表示/賞味期限60日以上推奨▶共通パッケージ指針:海外向け多言語ラベル・HSコード明記▶ロット&物流契約:共同倉庫納品か直送かを選択

成功の鍵
▷物語性コンテンツ:産地・歴史・職人を動画や記事に連動。▷顧客主体のSNS投稿:共通ハッシュタグで投稿促進▷体験物として周遊スタンプ用QRをレジ横に設置(紙→デジタルで運用負荷削減)▷広域ブランドを冠したギフト箱「NIKKO・NASU・TOCHIGI 3 Sweets Selection」などで面的ストーリーを訴求。

神奈川・鎌倉=「古都×ナッツ」

鎌倉市:観光客の半数近くが菓子を土産購入▷日帰り客中心だが宿泊客は土産代3.7倍▷回遊導線上の手土産需要が安定

鎌倉なら JR鎌倉駅 → 小町通り → 鶴岡八幡宮、長谷・北鎌倉方面など、観光客の8割前後が歩く“回遊ルート”があります。実調査でも 62%の訪問予定者が小町通り周辺を歩く と回答

歩行者ボリュームが常に高い
日帰り比率が高い鎌倉では、曜日や季節で多少の増減はあっても通年で人通りが絶えず、客数変動が比較的緩やか。

半数が菓子系みやげを購入
アンケートでは 観光客の約50%が「菓子」を手土産に購入。宿泊客に至っては飲食費と土産代がほぼ同額で、日帰り客でも飲食費の半分以上を土産に充てる。

当日持ち帰りやすい包装:片手で安定して持てる形状、映えるストラップ型で衝動買いを後押し。食べ歩き+土産の2段構え:試食・食べ歩き用ミニサイズ→箱買い誘導で客単価アップ。

日帰り客向け配送サービスでギフト需要も取りこぼさないようにする。

鎌倉紅谷「クルミッ子」など、余剰生地の再活用から生まれた“物語性ある定番”はリピート率を押し上げる好例です。→鎌倉紅谷「クルミッ子」誕生ものがたり→きっかけは“もったいない”精神

およそ40年前、看板サブレ「鎌倉だより」を仕込むと 生地が少し余るため「捨てるくらいなら何か作ろう」と試作したのが、クルミ入り自家製キャラメルを挟んだ “クルミッ子”でした。

名前は“くるみ+〜っ子”という親しみやすい語感で命名。当初は大小さまざまな形で焼いていたが、一口サイズがキャラメルと生地のバランスが最も良く主力商品として定着します。

初代パッケージは源頼朝:二代目社長(現会長)が歴史好きで、源頼朝を描いた荘厳な箱を採用(1980年代)したものの観光客には硬い印象で売場でも目立たない印象でした。

“リスくん”への大転換(2008年)三代目・有井社長が就任時に刷新。個包装にいたリスくんを外箱全面に配置し、色味も明るく変更。これが想像以上の反響を呼び追加発注が殺到します。

メディア露出と受賞ラッシュ
2012 年 神奈川県名菓展で最優秀賞。健康志向で“ナッツブーム”が追い風となり、テレビや女性誌で紹介が急増する。売上はリニューアル前の数倍になります。

“余剰生地の副産物”から“ブランドの象徴”へ
商品比率は今や売上の過半数を占め、工房見学や製造体験型の**「クルミッ子ファクトリー」**まで誕生。

コラボ・限定缶・ハート形クルミを探すSNS企画など、“物語”を拡張し続けています。

教訓:廃棄削減のアイデア品でも、①味の完成度 → ②親しみやすいネーミング → ③物語性あるパッケージ → ④メディア露出 と、観光菓子の代表銘菓へ成長できる─その成功例が「クルミッ子」です。

京都=「抹茶&発酵(酒粕、漬物、味噌)」

京都市:観光客 5,028万人、観光消費額 1兆5,366億円▷外国人比率が再上昇・消費単価も高い▷高付加価値×ストーリーがメイン収益

菓子ビジネスは 小ロット×地域色 が強み。
◆コレクション欲を刺激: スタンプラリー/限定パッケージ/ナンバリング缶
◆セット買い・ルート買いを誘発:拠点コンプリートBOX・食べ比べセット
◆地域物語による価値向上: “◯◯街道の発酵巡礼”など共通テーマでストーリー強化
◆旅の終了後のリピート/越境EC導線
WEBからの再購入導線

単価アップ=「集めたくなる仕掛け×セット化」で平均客単価が伸びる。ファン化=「物語を追いかける体験を買う+SNS共有」周遊拠点を点ではなく“物語で面に繋ぐ”ことで成果を狙います。

成功の7つの鍵(チェックリスト)

看板商品の独自ストーリーは語れるか
五感を刺激するパッケージと店構え
SNS×体験イベントでUGCを量産
FLコスト55%以下の原価&人件費設計
廃棄ゼロ設計(予約制・リフォーム・フードシェア)
多言語&越境EC対応で旅後売上を確保
動線に沿った立地・ポップアップ展開で回遊率UP

製造・販売プロセスの非効率と解消ヒント

→①レシピリニューアル+技術指導で新人でも均質品質(機械化しないことで他社の模倣を防ぐ究極の差別化) ②ピーク集中による待ち行列→事前予約制で回転率+15% ③オンライン未対応→常温焼き菓子限定の公式ページ、越境ECは冷凍便活用

廃棄率0を目指す在庫管理

日配菓子の余剰:予約販売+時間帯別焼成 廃棄▲50%▷生ケーキの残品:「TABETE」等フードシェアアプリに夕方出品→追加売上+SDGs訴求

余剰生地:クッキーサンドやアイス用パーツにリフォーム→廃棄コスト→粗利へ転換

データ管理:POS+週次実績で需要予測を自動更新→材料発注誤差▲30%

コスト構造と利益を守るポイント

(原価+人件費)は60%が生死ラインで理想は55%。

原価管理:製造ロス(材料管理ミス、計量ミス、製造ミス、破損、落下損失分)計算まで含めた“実質原価”でメニュー採算をチェック

地元食材の直接購入で中間マージンを圧縮
人件費最適化(地方雇用創出補助金)→ピーク時は学生アルバイト/閑散期は家族経営で変動費化

一部工程をセントラルキッチン共有で集約する

賃料目安:売上の10%以内。京都・鎌倉の中心部は坪単価高のため、路地立地+映え内装で賃料圧縮を定番戦略とします。

最新マーケティング戦略

◆SNS映え投稿:Z世代の6割超が購入前にSNSで情報収集。ビジュアル重視の短尺動画を量産。流入経路の最上位に。新商品露出→即完売が常態化

◆体験型ワークショップ:和菓子づくり体験/パフェ作り。店内滞在時間、平均単価20〜30%増

◆地域コラボ限定品:地元酒造の酒粕×羊羹、農家×規格外品のフレッシュタルト、豆腐店のおから×クッキー→メディア露出で新規客獲得

◆トレンドスイーツ即応:グミ・アサイーボウル等、10代調査で上位の素材を小ロット投入▷Z層の話題になると→顧客の自主SNS投稿が増す。UGC = User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ)― ハッシュタグ投稿、レビュー、ブログ・動画が増える

信頼性向上:店側発信より第三者の声が強い“社会的証明”になる▷認知拡大:フォロワーのフォロワーへ拡散し広告費ゼロで宣伝になる▷購買促進:投稿を見た人の購買意欲が平均2.4倍※に。※メタ社調査

◆SEO/ハッシュタグ検索強化:投稿総量が多い商品は検索結果の上位に上がりやすい(スイーツ店向けに即実践できる策は)公式ハッシュタグの固定表示→レジPOP・チラシに「#旅先スイーツ選手権」などを印刷

“撮りたくなる演出”→季節限定パッケージ・断面映えカットサービス▷投稿特典キャンペーンを付与する→投稿画面提示でトッピング無料/次回10%OFFクーポンなど▷リポスト&いいね返し
公式アカウントが即反応→ユーザーの投稿モチベ維持

観光地における菓子業界の動向・まとめ

観光菓子市場は回復が進み「味+物語+体験+環境」の4点セットを磨いた商品が次の主役となります。味とストーリーで心を掴み、SNSと体験で共有し、環境問題に配慮する—このバランスを取れた製品がリピーターの支持を獲得し、観光地で長く愛される存在になれるはずです。

「看板スイーツ開発」「メニュー設計」「コスト改善」―観光地スイーツの 立ち上げ・リブランディング をワンストップでサポートします。お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。〇〇はどうしよう…等と「悩む時間」を費やしても「行動」が、どんどん遅れてしまいます。それより必要な行動に絞って戦略通りに効率良く動く方が確実に結果が出ます。

うーん…これを聞くべきか…?迷った時点でLINEから、お気軽にご相談下さい(月江直通で自動情報配信ではございません)

◆月江 瑞穂(つきえ みずほ)と申します。
商品開発をしたり、製菓業界の知見をお話したり、パティシエに技術指導をしたりしています。3年続ける人が、わずか1%しかいない菓子業界に(こそだてしながら)25年在籍している珍獣です。スイーツ技術コンサルタントとして活動中。

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